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最高裁判所第二小法廷 昭和52年(オ)344号 判決

主文

理由

上告代理人田宮敏元の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係によれば、被上告人灘清子の被相続人である灘つねは、被上告人東和信用組合の管理部職員として貸与の調査と回収の事務を担当していた上告人の勧めに応じて、自己の預金とするために六〇〇万円を出損し、上告人の姓である「石田」と刻した、かねて保管中の印章を上告人の持参した定期預金申込書に押捺して、上告人名義による記名式定期預金の預入手続を上告人に一任し、上告人が、灘つねの代理人又は使者として被上告人東和信用組合との間で元本六〇〇万円の上告人名義による本件記名式定期預金契約を締結したうえ、同被上告人から交付を受けた預金証書を灘つねに交付し、灘つねがこの預金証書を前記「石田」と刻した印章とともに所持していたというのである。右事実関係のもとにおいては、本件記名式定期預金は、預入行為者である上告人名義のものであつても、出損者である灘つね、ひいてはその相続人である被上告人灘清子がその預金者であると認めるのが相当であつて、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 本林 譲 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊 裁判官 栗本一夫)

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